読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

木蓮

木蓮

 朝の四時台に車で家をでた。藤沢市にはいってしばらくのところで夜が明け、車のライトを消した。途中、二四時間営業の牛丼屋で朝定食をとり、コンビニエンスストアで昼のおにぎりなど食料を買う。隣に停めた軽トラックのおじさんが、買ってきたばかりの熱いコーヒーを、躓いて投げ出し、だめにしてしまった。湯気があがっている。登山道の入口にある駐車場で上着を着、靴下と靴をはきかえ、リュックを背負う。杖は二本。あとすこしで七時にはなるものの、なんとか六時台の最後で出発ができた。

 その登山道の入口に、木蓮のおおきな木がある。白い猫の毛のような、もこ、もこ、もこ、とした蕾をむすうにつけている。花はひとつも咲いていないので、白いハクモクレンなのか、紫のシモクレンなのかはわからなかった。よくはわからぬままに、コブシではないと憶測。

 山歩きは、途中でお茶にしたり、ご飯にしたり、ベンチで横になって昼寝をしたり(防寒の雨具まで着こんでおいたのだが、あまりの寒さに十五分で目が覚めた――)、一時間ほどただじっとして鳥の写真を撮ったり、咲きはじめた菫の写真を撮ったり、春リンドウの群生地を訪ねたり(早すぎて、まったく姿がない)、歩くよりも遊んでいる。時どき、息がぜえぜえというぐらい歩いてみたりもする。

 夕方にはまだ余裕があるころに登山道入口まで戻ると、木蓮の蕾がひとつだけ、たったひとつだけ、開きかけていた。色がわかった。白ではなく、紫の木蓮。

写真 紫木蓮の蕾 東丹沢 2017.3.11撮影