読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

>シナリオ1=自ら軌道修正 シナリオ2=トップだけに責任を負わせる シナリオ3=自由化と旧体制の断罪<北朝鮮を開放すれば、「金銭的負担」が日本に回ってくる可能性も>シナリオ4=中国に後見させる

【前の日記より】

手を血で汚してしまった金正恩には、もう期待できない

シナリオ1=自ら軌道修正

金正日が死去して、その後継が「スイスの寄宿学校に留学していた若者」だと聞いた時に、「もしかして自由社会の空気を知っている人物では?」という期待をしたことがありました。その時にチラッと思ったのは、蒋経国氏のことです。蒋経国という人は、勿論蒋介石の息子で後継者ですが、父の死去後には戒厳令を停止するなど自由化の布石を打ち、総統公選制へ、そして本省人の後継指名など大きな改革を行ったわけです。

ですが、金正恩蒋経国になったらというシナリオはもう消滅したと考えるべきでしょう。既に、親族や側近の粛清など相当に手を血で汚してしまっているということがありますし、現時点での核開発は完全に国際法違反で、戦争犯罪レベルです。粛清劇が起きているということは、そのように身の危険を感じていることの裏返しとも理解できるわけで、リーダーをそのままにして、そのリーダー本人がソフトランディングへというのは、相当に難しいように思われます。

そもそも蒋経国という人は、父の蒋介石の存命の時代から心深く期するところがあって、例えば父の側近や親族など守旧派をどうコントロールするか、隠密裏に計算をしつつ、我慢もしてきた、そんな凄い人物でもあったわけで、そのような「巨人」と、あの若者は比べるべくもないように思います。

シナリオ2=トップだけに責任を負わせる

一つ想定されるのは

>>ルーマニア革命におけるチャウシェスク方式<<

です。トップ夫妻だけが除かれて、その他の政権中枢は統治を継続するためにほとんど罪を問わなかったわけです。どうして、この措置で収まったのかというと、ルーマニアの場合は、蓄財とか国民への弾圧というように「犯罪が単純」であったわけで、要は専制君主のような統治を断罪すれば良かったのです。

ですが、北朝鮮の場合は何代にもわたって、違法な核開発、他国からの人材の拉致、自国民への虐待、対外的なテロ行為、覚せい剤等の密売、大規模な偽札製造、人道支援物資の横流し国際法違反の闇市場への武器横流しといった、犯罪行為を多角的に行ってきたわけですから、トップだけの責任にする訳にはいきません。

まして、その他の人々の戦争犯罪、人道に対する犯罪などを免罪するようでは、真相解明はできないでしょうし、そもそも新国家の中でのモラル・秩序の形成も上手く行かないことになります。

シナリオ3=自由化と旧体制の断罪

というわけで、少なくとも、現在の統治組織の相当な部分については、個人的な犯罪を問うべきであり、本気で断罪するのであれば旧体制に対する大規模な戦犯法廷の設置が必要となります。

仮にそこまでやるとして、条件としては国連やEUのように「死刑は適用しない」つまり命は取らないということにするのは適切と思いますが、それにしても、相当に大規模な犯罪捜査になりますし、その証拠保全などの活動をしっかり行うには、日米韓と中国の密接な連携は欠かせません。

ただ、本当に統治者の責任を問うのであれば、国民には自由と人権をしっかり保証して進めるのが正道であり、そうなると中国は100%協力はできないということになります。また、唐突に北の住民に自由を保証してしまうと、38度線が崩壊して「なし崩し的に統一」が進んでしまい、それを韓国が支えきれないと事態が混沌としてしまうことにもなります。

自分でも苦しいところが多々あるのですが、現実を直視するのであれば、北朝鮮の「戦犯逮捕・捜査」を「自由化」とセットで行うと、「なし崩し式の統一」が起きて韓国はそれを経済的にも社会的にも支えられないというのは前提としなくてはならないと思います。

私自身、90年代の韓国にはかなり深く入って行ってビジネスや個人的な親交を結んだ経験があり、彼らの、特に左派の人々の心の中にある「民族統一」という「悲願」のマグニチュードは熟知しているつもりです。ですが、上記の通り現実を直視するのであれば、今から予見しうる2年とか5年というレンジの中で、「なし崩し的な自由化と統一」というのは、「全員を不幸にする」としか思えません。

北朝鮮を開放すれば、「金銭的負担」が日本に回ってくる可能性も

シナリオ4=中国に後見させる

では、どんな現実策があるのかというと、それは中国に後見させるという手法です。狡猾な発想法ですが、中国が100%自由な国では「ない」ことを逆手に取って、管理的な手法で北朝鮮を「一時期信託統治」させるのです。そして、トップをはじめ、核開発や拉致、テロ、麻薬密売などの犯罪を犯した人物を摘発すると共に、経済のリストラをするのです。

中国一国に責任を持たせるのは筋論として無理があるので、例えば国連が主導して、朝鮮戦争の休戦委員会の延長のような形で、米国、ロシアやEUあるいは日本も入る、但し、実際の「仕切り」は中国に任せるという体裁でしょうか。

最初は競争力は出ないでしょうが、上手く安い労働力を使いながら、中国そして韓国の製造委託先として徐々に経済を拡大し、民生を向上させるのです。そして、100%の自由は適用しないながらも、一種の改革開放を進めるというわけです。ちなみに、中国はそのようなシナリオを持っていたはずで、その場合に為政者の代替として金正男という「隠し玉」を持っていたわけですが、そのことを察知した、あるいは邪推した弟に殺されてしまったわけです。

要するに北朝鮮を緩衝国家、過渡的国家として中国による後見に委ねるというわけですが、勿論、幾つかの副作用があります。一番の危険は、再統一の悲願を掲げた韓国内のグループが強く反発するということでしょう。仮に北朝鮮の中に呼応するグループが登場して、それが弾圧を受けるようですと、中国と韓国の関係もギクシャクすることが考えられます。

ですが、中国と韓国が力を合わせて北を「ゆっくりと改革開放させながら、安い労働力として使う」ということになると、韓国と中国には関係を改善させる要素ともなると思います。そうなれば、例えばですが、財界主導の韓国の右派は、このスキームに乗って親中、統一を悲願とする左派は反中ということで、韓国の内部対立が激化するかもしれません。ですが、自殺行為的に「なし崩しの統一」を行って「成熟社会を崩壊させる」よりは韓国にとっても、東アジアにとっても、遥かにマシではないかと思います。

問題は核開発はともかく、拉致やテロの責任者や実行犯などについて、真相解明と責任追及が100%徹底できない危険です。ここは、何とか情報公開の透明度を高めて最終的に徹底できるようにすべきですが、何とも難しいところです。

更に懸念されるのは中国がリスクを取って、こうしたコミットをするだろうかという問題です。確かに朝鮮戦争の際には、勢い余って「北伐」にのめり込んだマッカーサーに対して、中国は北朝鮮救済の義勇軍を送った経験があります。ですが、それによって得たものはそれほど多くはないわけですし、何よりも中国4,000年の歴史を振り返れば、朝鮮半島にコミットしても「ロクなことにはならない」という教訓を彼らは持っています。

具体的には、隋(高句麗遠征の泥沼化)と明(秀吉に対抗した李氏朝鮮の救済作戦)の2つの大王朝が、このために滅亡している

のですから、過去の歴史に教訓を求める彼らとしてはどうしても慎重になるのではないでしょうか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー

   【次の日記に】